Bitter
目を覚ますと、体中が冷たくて、服はすごい量の汗で濡れていた。
息を切らして天井を見つめていると、ぬっと厚化粧の顔が視界に入ってきた。
『あ、気付いたわね。はい、熱計って。』
なんだあんたか、というような目で体温計を受け取ると、保健のおばちゃんの隣から夢と同じ声が聞こえた。
『起きたか。』
『!』
高瀬の顔を見ただけで涙腺が緩むのに気付き、
慌てて彼に背を向ける。
しばらくしてピピピと電子音が鳴った。
おばちゃんにそれを渡す。
『36.7度‥あれだけ吐いて平熱‥。』
『‥‥。』
『ねぇ香坂さん、あなたやっぱりストレス—‥』
『先生。』
おばちゃんにまた問いただされそうになったとき、彼がそれを制した。
『さっき佐野先生が呼んでいましたよ。職員室です。』
『え‥あぁ、はい、ありがとう。』
少しきまり悪そうに彼女は出ていった。
私は背を向けたまま遠ざかるスリッパの音を聞いていたが、視線を感じてちらりと彼を見ると、
案の定彼は、微動だにせずこちらを見つめていた。
こんなに長く彼の目にとらえられるのは、あの最後の屋上の日以来のはずだ。
その瞳が物語るものは、たくさんあるような、たった一つであるような、なんだか私がとらえるには大きくて複雑なものだった。
『香坂‥』
『‥‥。』
『きたんだな。』
『———‥‥。』
彼はそういうと軽く咳払いをして視線をそらした。
私はどうしていいかわからず、あなたに会いに行ったわけじゃない、など、すぐにわかる嘘をついた。
『じゃぁ何。』
『‥‥。』
『なんであんなところで倒れてんだよ。』
『‥‥っ。』
『何があった。』
私は言葉につまった。
出てくるのは涙ばかりで、
違う、泣きたいわけじゃない、と 頭をふった。
息を切らして天井を見つめていると、ぬっと厚化粧の顔が視界に入ってきた。
『あ、気付いたわね。はい、熱計って。』
なんだあんたか、というような目で体温計を受け取ると、保健のおばちゃんの隣から夢と同じ声が聞こえた。
『起きたか。』
『!』
高瀬の顔を見ただけで涙腺が緩むのに気付き、
慌てて彼に背を向ける。
しばらくしてピピピと電子音が鳴った。
おばちゃんにそれを渡す。
『36.7度‥あれだけ吐いて平熱‥。』
『‥‥。』
『ねぇ香坂さん、あなたやっぱりストレス—‥』
『先生。』
おばちゃんにまた問いただされそうになったとき、彼がそれを制した。
『さっき佐野先生が呼んでいましたよ。職員室です。』
『え‥あぁ、はい、ありがとう。』
少しきまり悪そうに彼女は出ていった。
私は背を向けたまま遠ざかるスリッパの音を聞いていたが、視線を感じてちらりと彼を見ると、
案の定彼は、微動だにせずこちらを見つめていた。
こんなに長く彼の目にとらえられるのは、あの最後の屋上の日以来のはずだ。
その瞳が物語るものは、たくさんあるような、たった一つであるような、なんだか私がとらえるには大きくて複雑なものだった。
『香坂‥』
『‥‥。』
『きたんだな。』
『———‥‥。』
彼はそういうと軽く咳払いをして視線をそらした。
私はどうしていいかわからず、あなたに会いに行ったわけじゃない、など、すぐにわかる嘘をついた。
『じゃぁ何。』
『‥‥。』
『なんであんなところで倒れてんだよ。』
『‥‥っ。』
『何があった。』
私は言葉につまった。
出てくるのは涙ばかりで、
違う、泣きたいわけじゃない、と 頭をふった。