Bitter
気付くと、『ごめん。』と、口に出していた。
カナはぽかんとした顔をした。
はっとして、いそいでボールをとり、練習を始めると、隣で彼女も同じように壁にボールをうちつけ練習を始めた。
『一緒に組もう』とあえて言わない彼女に、好意を覚えた。
『私もごめんね。』
彼女は壁を見つめながらうつむき加減でそう言った。
パーン、パーンとボールがはじけて返ってくる音が響く。
『あんた何も悪いことしてないじゃん。』
『‥‥‥‥。』
きっと彼女もさっきの私と同じような意味の謝罪なんだろう、と思った。
少し胸がすっとして、
話す余裕が生まれる。
『私かっこ悪いね。』
『え?』
『あんたが最初から潔く手放したものに、最後までしがみついて。』
彼女の手がとまる。
『結果こうなって。』
指に力を入れると、その部分だけボールが少しへこんだ。
『麗ちゃん‥
‥そう考える必要ないよ。
人を信じる力が、麗ちゃんの方が強かったんだよ。
何も悪くない。』
カナの声が優しいから、少し鼻先がつんとしてくる。
‥それは違う。
違うんだよ。
私はただ、期待していただけ。
必要としてくれるのを待っていただけ。
信じる力はあんたのが上。
だって、
こんな私を、
今でもこうやって見限らないじゃない‥。
何かがこみあげる。
『ありがと‥‥』
そう言うのと同時に先生の笛が鳴った。
音がするほうへ皆がだるそうに集まる。
決まった列に並ぶと、隣のアコが私の耳にそっと囁いた。
『残り物ペア。』
その瞬間、カァッと顔が熱くなるのを感じた。
歯を食い縛って気持ちを落ち着けた。
絶対に今、泣きたくない。
恥じるべきことは何もないんだ。
彼女達の浅はかな馴れ合いと比べないでほしい。