スタンド・アローン

「むう。」

 驚いたことに同じクラスだった神逆に案内してもらっていると、後ろから怒気を含んだ声が飛んで来た。

「お姉さま、そいつ一体何者ですのっ」

 振り向くと、セーラー服を着たポニーテールの生徒が片方の眉をつり上げ、腕組みをしていた。

 男勝りな気の強さがにじみ出た、体育会系の女子だ。

「ちょっとあなた、何の権利があってお姉さまに近付いてるの」

 なおも言いつのろうとするのを、神逆が割って入って制した。

「おやめなさい、雪風さん。この方は海淵の生徒であり、私のクラスメイトです」

 雪風と呼ばれた生徒はかなりショックを受けたようだった。

「お…お姉さまが、男と同じクラスだなんて…」

 思わず後ずさるが、場所が悪かった。

 踊り場にいた雪風は、階段の段差を踏み外してしまう。

「っ!」

 声にならない悲鳴。神逆も突然のことにただ呆然としている。

 辛うじて動けた俺は、何とか雪風の手を掴んで引き寄せる。

「てえぃっ」

 いくら軽い女子とはいえ、片手で持ち上げるのは一仕事だ。引き上げたはいいが、こっちが体勢を崩してしまう。
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