スタンド・アローン
「ニャ」

 俺の視線に気付いたらしく、猫は顔を上げる。

「いいから、食ってろ」

「ニャ」

 立ちながら言う俺に答えるように、猫はまた一声鳴く。

「ゴング・ノーサイド。リングの上で何があろうと、外に持ち出すのは無作法ってもんだ」

「綺麗事を!」

 ディアナは詰め寄ろうとするが、そこに俺の姿はない。

「鈍ったな」

「!なっ…」

 背後に回りこんで声をかけてやると、ディアナは慌てて振り返る。

「あの時のお前は、目で追うくらいはできたよ。それが、気配すら感じられないなんてな」

 俺は腹が立ってきた。

「まがりなりにも、決勝のリングに上がって来たんだ。少なくとも気概は本物だと思ったのに」
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