短い夏休み
懐かしい記憶につい笑みがこぼれた

「将太って人気者だったんだ」

樹が隣で言った

「そうだよ!今の樹並みに人気者だったんだから!」

自分のことのように自慢げに答えた

満足そうに笑う私に樹が言った

「将太のこと好き?」

樹まで頭がおかしくなってしまったのかと思った

「好きなわけないじゃん!」

少し大きな声で言った

「本当は?」

樹はまだ聞いてきた

「好きだけどそうゆう好きじゃない!本当に!将太は幼なじみって言うより弟って感じだもん。なんか目が離せないだけ!好きじゃない」

なぜか必死に答えた

樹はそっかと言うと黙ってしまった

時々、街灯に照らされる樹の顔は笑っているように見えたが何故かちゃんと見ることができなくて、確認できなかった

居心地の悪い時間が流れる

何かを話せばこの空間から抜け出せそうだが

思いつかない

私たちの足音がよく聞こえた

土手を降りてやっと次の信号

ここで樹は左折、私はまっすぐ。いつもここで別れる

「今日は将太もいないし、家まで送っていくよ」

「え?」

急に話しかけてきた樹の思いもよらない言葉

私は返答に困った
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