短い夏休み
笑いが止まらない私

将太はもう暗闇の中に消えていってしまった

お腹を抱えて笑う私の視界に樹が入った

樹は将太が走り去った方向をただ見つめポカンと口を開けている

「すごいやつだよね」

笑いすぎて滲んだ涙を指で拭きながら樹に話しかけた

「すごすぎる…」

まだ口は開いたまま

私もまた少し笑った

そして二人ともおちつくまでそこに立ち止まっていたが

数分すると私たちはまた歩き始めた

将太は過去に頭をぶつけた経験はないかという話で私たちは盛り上がった

「小学校の時、跳び箱をしてたとき、勢いよすぎて顔面から着地してたこともあったよ!あれは大惨事だったなー!マットが将太の鼻血で真っ赤になったんだよ!よく死ななかったよね。いや…将太だから大丈夫だったのかな?それでも、頭じゃないしな…」

ふと甦る記憶

懐かしい気もするがついこの間のように覚えている

みんなが次の授業中ずっと心配していたのに給食の時間になると

鼻にティッシュを詰めた将太が教室に現れたのだ

給食を食べながら血の味しかしないとふざけてみせた将太にバカだけではない何かを感じたのもこの頃だ
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