サラリーマン讃歌
賢明女学院の河野 勇人（かわの はやと）。

教師という聖職の身にありながら、己の生徒の弱味に付け込んで、卑劣極まりない行為に及んでいる最低最悪な教師。

ニュースなどではそんな話はゴマンと流れている。

「いい加減にしろよ」と軽い憤りは覚えるものの、心に深く残る程今の世の中では珍しい事ではない。

だが、それが自分の身近で起きてるとなれば話は別である。
それも自分の愛して止まない相手であれば尚更である。

怒りを通り越して、殺意にすら変わりかけていた。

「お願い、サクくん！クミちゃんを助けてあげて！もう、私どうしていいのかわからないっ！！」

梓の今まで耐えていた感情が、堰を切ったように流れ出てきた。

「クミちゃんは親にばれたくないから絶対に言わないでって言うし！！」

梓は流れる涙を拭こうともせず、俺の腕に縋りつき俺の顔を凝視してきた。

久保はそんな梓の横に慌てて近付くと、彼女の頭を優しく撫でてやり、背中を擦って気を落ち着かせてやっていた。

「大丈夫。俺が必ず助けてやるから」

自らの激しい怒りをも落ち着かせるように大きく深呼吸をすると、静かな声で梓に告げた。

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表紙・目次

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