サラリーマン讃歌
俺は梓のされるがままになって、ただ梓が泣き止むのを見守っていた。

暫く声をあげて泣いていた梓だったが、落ち着いてきたのか、顔を上げ俺達に向かって二カッと笑った。

「おもっいきり泣いたからスッキリした」

目を真っ赤にしながら言う梓が俺には痛々しく感じられたが、俺も彼女に優しく微笑み返した。

「俺に任せて」

そう言うと梓は安心した様な顔をし、大きく頷いた。

「でも、何で万引きなんかで……」

今まで疑問に思っていたのだろう、梓が落ち着くと久保が呟くように言った。

確かにそれは俺も疑問に感じていた。

確かに万引きは犯罪である。犯罪に軽いも重いも無いのかもしれないが、中学、高校の頃などはよく聞く話だ。

万引きの代償に自分の体を慰めものにされるなんて、俺の価値観の中では有り得なかった。

「それは私も思ったよ。だから訊いたの、クミちゃんに」

当然だと言わんばかりに梓は答えると、その時の会話を再現してくれた。

やはり、そこには空見子の家族への思いが大きく関わっていた。

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