サラリーマン讃歌

~空見子の過去~

空見子が産まれた当時は四人家族で、父親である登(のぼる)は地元では有名な建設会社を経営していた。

登は仕事人間で家庭を顧みず、彼女が幼い頃からほとんど家にいる事はなかったらしい。

だが、時折家に帰ってくる登は唯一の娘を溺愛する子煩悩な父親であった。
空見子もそんな父親を愛していた。

彼女が八歳になるまでは……

その頃に空見子の両親が離婚したのである。

仕事人間で家庭を犠牲にしていた登に愛想を尽かし、母親が蒸発したのである。

父親とは五歳年下であった智絵美は、子供もよりも旦那を深く愛していた。

大恋愛の末に結婚した新婚当初は、仲睦まじい夫婦だったのだが、子供を産んでからは喧嘩が絶えなかったらしい。

子供が居なかった時は耐えられた寂しさも、子供が産まれてから、登の愛情が子供に向かっていくのが耐えられなかったのだろう。

登は彼なりに妻を愛し、子供を愛してはいたのだが、妻はそれで良しとはしなかった。

仕事より、子供よりも自分自身を見て欲しかったのである。

そんな母親に成りきれていなかった彼女よりも、子供達が父親に懐いてしまうのは仕方のない事だった。

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