サラリーマン讃歌
高嶋は俺の怒りに満ちた視線を平然と受け止めると、冷静に尋ねてきた。

「知るかよ、そんな事!」

冷静な高嶋の態度が逆に俺の怒りを刺激した。

「やっぱ馬鹿だよ、お前」

呆れたように高嶋が口を歪ませた。

「だから、何が馬鹿なん…」

「馬鹿だから馬鹿って言ってんだよ!!今、空見子ちゃんは一人で苦しんでるんだろ!!その時にお前が傍にいてやらねえでどうすんだよ!!」

俺の言葉を途中で遮ると、高嶋は突然怒りを顕に俺に詰め寄ってきた。

「でも、俺が近くにいたら…」

「それが馬鹿だって言ってんだよ!何で彼女はお前をフったんだ!その事をお前に知られたくなかったからだろ!好きな人にそんな部分を見せたくなかったからだろ!でも、お前はもう知ってんじゃん!!知ってしまったじゃん!!」

俺に言葉を挟む余裕すら与えない程、高嶋の剣幕は凄まじかった。

「それでもお前の気持ちは揺らがねえんだろ!だったら何を悩んでんだよ!今すぐ行って来いよ、空見子ちゃんの所に!彼女の傍にいてやれよ!!彼女を暗闇から救い出してやれよ、!!それが出来るのはお前しかいないだろうが!!優しさを履き違えんな、この馬鹿野郎がっ!!!」

俺の視界が急に滲んだ。

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