サラリーマン讃歌

～祈り～

自分のマンションまでどうやって戻って来たのかは、あまりよく覚えていなかった。

ふと気が付くと自分の部屋の前まで帰って来ていた、そんな感じであった。

それほどに登が吐いた一言はショックだった。

（……クミちゃんはもういない）

（一体何処にいったんだ？）

このふたつの言葉が繰り返し、グルグルと頭の中を回っていた。

俺が扉を開けて中に入ると、奥の部屋から俺を待っていたかのように、慌てた様子で高嶋が玄関までやって来た。

何故、高嶋が俺の部屋にいるのか疑問に感じる程、俺の頭は混乱していた。

「見たか、ニュース？」

「ニュース？」

だが、そんな些細な疑問より高嶋の問いに対する疑問の方がそれを上回った。

「ま、見れる訳ないわな」

「…………」

「空見子ちゃんに関係してるのって高校の教師だろ？河野って名前の？」

「何で知ってるんだ、お前まで？」

登に会った時から数々の疑問が生まれていた俺は、高嶋の一言で更に混乱した。

「河野が捕まったって」

俺の疑問には答えず、高嶋はそう告げた。

「え？どういう事だ」

「だから逮捕されたの、強制猥褻容疑で」

今の俺の頭の状態では、高嶋が言ったその出来事を直ぐに理解出来なかった。

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