サラリーマン讃歌
俺は先程の高嶋の言葉を思い出すと、慌ててテレビの前まで行き、ニュースがやっているチャンネルを探すためにリモコンを連打した。

「間違いないのか、河野が捕まったって?」

ニュース番組にチャンネルを合わすと目だけはしっかりテレビを観ながら、俺は再度高嶋に確かめた。

「間違いない。賢明の河野教諭って言ってた」

そう言いながら、高嶋は自分の部屋の如く全身ずぶ濡れの俺の為に、箪笥からバスタオル取り出し、俺に向かって投げてきた。

俺はそれで軽く頭を拭きながら、食い入るようにニュース番組を見ていた。

「で、どうだったんだ?」

「何が?」

未だ混乱しきっている思考とニュースに集中している俺には、高嶋の質問の意味を全く理解出来なかった。

「空見子ちゃんの事に決まってるだろ」

「ああ……」

自然と声のトーンが暗くなった。

「空見子ちゃんには会えたのか?」

「いや、会えなかった」

「そうか。ま、また会いに行きゃいいさ」

「……いや、何回行っても会えないよ」

俺は視線をテレビから高嶋に移した。

「何で?」

「あの家にはもう住んでないから」

「は?じゃ、何処にいるの?」

「……知らない」

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