サラリーマン讃歌
中途半端にしておくよりも、ハッキリと自分の気持ちを伝えてあげる方がその人の為になる。

頭の中では理解していても、それと感情の部分は別物だった。

人とはそういう生き物だ。

「……そうだな」

だが、その複雑な感情があるからこそ、人は恋をするのだ。

人を好きになったり、嫉妬したり、慈しむ心があれば、憎悪する心もある。

悩んだり、苦しんだりするからこそ、楽しさや喜びも感じられたりする。

人間の感情というものは、全て矛盾の上に成り立っている様な気がする。

「ありがとう、恭子」

「何言ってんのよ。元はといえば、私が口を滑らせたのが悪いんだから」

そう言って恭子は恥ずかしそうに笑った。

「……そうだな、恭子が悪い」

「あ、やっぱり直哉が鬼畜」

場の雰囲気を和まそうとした俺の言葉に恭子が素早く反応する。

「鬼畜って……」

困った様な顔をしている俺を見て、恭子がプッと吹き出した。

「嘘、嘘。さあ、準備、準備」

そう言いながら、恭子は腕捲りすると、俺に軽く手を上げて立ち去って行った。

俺も再び公演の準備に取り掛かった。

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