サラリーマン讃歌

～公演初日～

公演初日である今日は、朝から舞台を使っての通し稽古から始まった。

今日と明日の午後七時からの二回の公演予定である。

劇団員全員、仕事と両立させて稽古を続けてきたので、疲労もかなり溜まっているとは思うのだが、皆の顔は晴れ晴れとしていた。

疲労感よりも、本番への心地良い緊張感と期待感がみなの間には流れていた。

自分が好きな事をやっている時というのは、不思議と疲れないものだと改めて悟った。

「よおし、稽古はここまで！いよいよ、本番だからな！気合い入れていこお！」

座長の田島が自分自身にも気合いを入れるかの様にパンパンと手を大きく二回叩く。

みなも思い思いの掛け声をあげると自身に気合いを入れていた。

「本番頑張ろうね」

汗を拭きながら、いつもと変わらない笑顔で亜理砂が近付いてくる。

「お、おう」

昨日、恭子から亜理砂の気持ちを聞かされてから、妙に彼女を意識してしまっていた。

「ご飯食べに行こうよ」

「そ、そうだな」

十一時半を少し回ったくらいなので、昼飯を食いに行くにはいい時間帯ではあった。

「何、さっきから吃ってるのよ」

「ど、吃ってねえよ」

「吃ってるじゃん」