サラリーマン讃歌
亜理砂が笑いながら素早く突っ込んできたので、俺も思わず笑ってしまった。

「直哉、飯行くぞ」

座長が遠くの入口付近から俺を手招きしていた。座長の他にも何人かいるようだ。

「じゃ、行くか」

俺は座長に向かって軽く手を挙げて応えると、亜理砂に視線を戻して言った。

「行こう、行こう」

笑顔で亜理砂が答えると、彼女はスキップしながら座長達がいる方へ近付いていった。




俺達は軽く昼食を摂ると、各々最終の準備に取り掛かった。

役者陣は衣装に着替えたり、ドーランを塗ったり、音響・照明は最終チェックに入ったり、それぞれの役割に応じた準備をし始めた。

そして、舞台裏などの手が空いてる人間は、恒例のチラシ配りに出掛けていた。

「よし、じゃ俺達もチラシ配ってきます」

久保が片手にチラシをたっぷり持って立ち上がった。

「悪いな」

昼過ぎに梓が、今日休みである久保を引き連れてやって来てくれたのである。

「バイト代貰うからね」

「今度何か奢るよ」

「約束だからね」

何だかんだ言いながらこのバカプッルには、お世話になっているのので、それ位しないと罰が当たってしまう。

< 170 / 202 >

この作品をシェア

pagetop