サラリーマン讃歌
四年制大学をでて、働き始めた頃のスーツ姿には違和感を感じたが、今はこの姿がだいぶ馴染んできていた。

(それだけおっさんになったってことなんかな)

そんな事を思いながらコートを羽織り、一歩外に出ると、2月の凍てついた空気が突き刺さってくる。寒い、と言うようも、痛い感じだ。

エレベーターで一階まで降り、ありふれた五階建てのワンルームマンションを出ていく。体を震わせながら、いつもの駅へと向かう。

いつもと変わらぬ街並み、いつもと変わらぬ足早に歩いていく人々、まるでそれに同化するかの様に、いつもの電車に乗り遅れまいと足早に急ぐ。

意外と早くに駅のホームに着いたので、電車が来るまで暫し時間がある。唯一の嗜好品である煙草を吸う為に、喫煙場所へと向かった。最近の喫煙場所はやたらと隅っこの方へと追いやられている。

(めっちゃ邪魔者扱いのポジションなんだよな、喫煙場所って。そのくせにやたらと煙草の税金はあがるし…)

と、小さな怒りをぶつけながら煙草を燻らせていた。吸い終わるのとほぼ同時に、電車がホームへと滑りこんでくる。

人息でむせかえる様な満員電車に揺られながら、倒れまいと吊革に倒れ込む様につかまっていた。

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