サラリーマン讃歌
~マンネリ~
「困るんだよ、桜井君。もっと早く対応してもらわないと。そんなんじゃ、今後君の会社との付き合いも考えさせてもらうよ。だいたい、君の…」
青筋をたてながら倦くし立てる取引先の重役の言葉を、平身低頭している俺の頭越しに聞いていた。
「申し訳ありません。早急に対応させて頂きますので、何卒お取り引きを止めるというのだけは…」
と誠心誠意の気持ちを込めて謝りの言葉を表す…と、言いたい所だが、そんな気持ちはあまりなく、何とかこの場を切り抜けようと頭をフル回転させていた。
一時間以上、床に額を擦りつけんばかりの勢いで謝り倒すという迫真の演技を続けていると、気がすんだのかブツブツ言いながら立ち去っていった。
その客先から逃げる様にそそくさとその場を後にすると、帰社するべく最寄りの駅へと向かった。
(はあ…何やってんだろ、俺)
会社の業務課のミスから起こったクレーム。当たり前の事だが、客の怒りの矛先は営業担当である、俺に向いた。
そんな日々を暮らしていると、酒を浴びるほど飲んでストレスを発散したいところだが、酒はあまり飲めない。
まったく飲めない訳ではないのだが、飲んだら直ぐに赤くなる。