サラリーマン讃歌
そう言って、開いている運転席の窓越しに久保を指差してきた。

空見子は怒った様な顔をしていたが、久保の方をチラッと見ると、頭を下げた。慌てて久保が頭を軽く下げる。

「そして、後ろに乗ってるのが噂のおじさん」

空見子は更に困惑したような顔で俺の方を見た。

「あ……変なおじさんだ」

俺の顔を見て彼女が呟いた。

相変わらず緊張していた俺だったが、空見子のその言葉を聞いて、思わず吹き出してしまった。

「何?」

そんな俺の反応を見て、不思議そうに空見子が尋ねてくる。

「なんか俺、あのお笑い芸人みたいだね」

まだ先程の余韻が残っている俺は、笑いながら答えた。空見子は何か考えるような表情をしたが、納得したように彼女は頷いた。

「さあ、クミちゃんも乗って、乗って」

相変わらず強引な梓は、空見子の背を押して車の後部座席に誘導した。

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