君への願い事
校内に昼を告げるチャイムが鳴り響く。

「ふわぁ~。……お昼かぁ…。眠たぁ……。」

利枝がむっくり頭を上げた。

「おはよ、リエ。どしたの?朝からずっと寝てぇ。夜どっか遊びにでも行った?


利枝は寝ぼけまなこで
かばんから髪ゴムを取り出し、背中まである長めの髪を頭の後ろで束ねながら答
えた。

「ちゃうちゃう。夜中ずっとオカンと話ししててん。こっちは夜中やけど向こう
は昼頃やから。学校も休校日って聞いてたから。ちょっとな。」
「あ、そっか。日本語学校の校長先生だっけ?
日本の夜中の時にアメリカが昼なら…、じゃあ今向こうは夜なんだ!」
「ん~、せやなぁ。今ニューヨークは夜の十時くらいやな。 」
「へぇ。お母さんとはちょくちょく連絡取り合ってるの?」

利枝は眠い目をこすりながら答えた。

「う~ん。昨日はたまたま、なんか話したくなってん。うん、なんかね…。オト
ンはウチとオカンが話しとかしてるのも嫌みたいやけど…。離婚したゆうてもウチか
らしたらオトンはオトン。オカンはオカンやからな…。」
「そっ、そうだね…。」

眠いせいなのか、お母さんと何か話したからかはわからないが、
芽依には、いつも明るく元気な利枝が今日は元気がないように感じた。

「メイちゃんごめん。今日は私お昼も寝とくわぁ…。ふわぁぁぁ~!」
「えぇ!リエ寝過ぎだよぉ!親子…!えっ!?もう寝たの?リエ、のび太みたい
……。」

利枝はあっという間にまた寝てしまった。

(もう!今日は日替わりの親子丼定食一緒に食べよって約束してたのに!)

そのあと芽依は一週間前から楽しみにしていた南青高名物の学食の親子丼定食を
大盛にして食べたそうな。
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