僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「……頭が冴えてる」

「ははっ。そういう時あるよな。寝てぇのにやたら頭がはっきりして眠れねぇの」


「ん」と言って、祠稀が1本の煙草を俺の口元に差し出した。特に拒否することもなく咥えると、祠稀は火を点けてくれる。


煙草を人差し指と中指に挟んで深く吸うと、やっぱりキツくて顔をしかめてしまった。


そんな俺を見て祠稀は笑ったけど、ふかさずにちゃんと吐きだされた紫煙に口の端を上げる。


「なんだ、吸ったことあんだな。意外」

「……片手で数えるくらいだよ。特に吸いたいとも思わないし」

「ふーん? 俺はダメだわ。吸わないとやってらんねー」

「祠稀は似合うね、煙草」

「なんだそれ」


フッと笑って夜空を仰ぐ祠稀に、本当にそう感じるんだけどな、と思う。


興味本位で煙草を吸ったのは中2の時だった気がする。だけど美味くも不味くもなかったし、体に悪そうだとも思わなかった。



――煙草じゃ、生きてる実感が得られない。



祠稀と会話してる最中も、寝る前に開いたメールの内容が頭に浮かんでいた。


夕飯の時に送られてきたメールは、俺の気分を最高に悪くさせる。



≪会う時間を設けてほしい≫




絶対、嫌だ。


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