僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
疼く古傷
◆Side:祠稀
「ふぁー……、はよ」
土曜日の昼。欠伸をしながら部屋を出ると、リビングのソファーに凪が座っていた。
「おはよう祠稀? ちょっとここに座りなさい今すぐに」
……バレたか。
そう思ったのは、凪の手に見覚えのあるものが持たれていたから。
笑顔のくせに怒りのオーラを振りまく凪にどうしたもんかなと思いながら、止まっていた足を動かした。
とりあえず言われた通りに、フローリングの床に座る。念のため、正座で。
「ベランダにこーんな物があったんだけど、祠稀のだよね?」
そう笑顔で言う凪の手には、昨日しまい忘れた灰皿代わりの空き缶。
「……そうだけど」
あっさり認めた俺を凪は暫く見つめ、空き缶をテーブルに置くと大きく溜め息をついた。
未成年なのに、とか。そんな説教なら聞きたくねぇなと思う。
別に悪ぶって吸ってるわけじゃねーし、俺の大切な記憶を守るために吸ってるだけだ。
そんなこと、微塵も話すつもりはないけど。