僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「よかった。業者はまだ来てないみたいだね」


20階建てのデザイナーズマンションの前。車寄せが確保されたエントランス棟には、まだ彗の荷物を乗せたトラックは止まっていなかった。


「……あと30分は大丈夫だと思うよ」


買い物したやつ片付けてる間に来ちゃうじゃん!


彗のマイペースな思考に心の中で突っ込みながら、一旦荷物を床に置く。


「……凪、これどうするんだっけ」


鍵を差し込むだけでいいんですけど……?


集合インターホンの前で固まる彗の手から鍵を奪い、「こう!」と教えた。


「心配だなー。携帯のメモ帳にでも打っとけば?」

「……さすがに覚えたよ」


嘘でしょ。よくひとりで入ってこれたねって褒めてあげたいくらいだよ。


再び荷物を持ち、グランドロビーに入った。エレベーターホールに向かいボタンを押して乗りこむと、彗がボタンを押す指を揺らしている。


「ちょ……7階の701号室!」

「……分かってる」

絶対分かってないよね! 完全に忘れてたよね!?


「はぁ……」


無意識に吐いた溜め息の理由が彗に伝わることなく、ドアは静かに閉まりエレベーターは上昇し始めた。



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