僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「まあ昔から高かったしね。今は163くらいあるかな」
逢う前に想像してたけど、だいぶ近かったかな……。
背は大きいほうで、スラッとした華奢な体だろうなって。きっと化粧も覚えて、大人っぽくなってるんだろうなって思ってた。
「――……」
不意に凪から前方に視線を移すと、思考が遮られる。
「……誰、あの人」
俺の声に凪も気付いたのか、701号室と700号室のちょうど中間あたりに腰掛ける人影を見つめる。
まるで鍵を忘れて家に入れない人みたい。
立てた片膝に頭を垂れるその姿は、なんだか怪しくて不思議だ。
蒼くも見える黒髪は長く、春にしては薄着だと感じた。
「……お隣さんの子供か、友達かな」
お互い誰だろうと思いながら脚を進め、うずくまる人の前を通り過ぎる。