僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


――きっと、ぬるま湯に浸かってる気分だったんだ。


いつでも出れるし、入れるし、そのうち冷めると思っていた。


俺は……俺たちは、気が緩んでいたんだ。


俯くこともなく、足元ばかり、地面ばかり見ることはなくなって。彗のことでいろいろあって、やっと訪れた平凡にのめり込んでいた。



その証拠に、俺は背後を気にしなくなっていた。


以前の俺なら、常に背後を気にしていたのに。全く、気にしてなかった。


神経を研ぎ澄ますこともなく、危険を察して振り返ることもななく。それがいかに危険か、知っていたはずなのに……。


今もなお知っていたら、騒ぐ俺と有須を背後から見ていた視線に、妖しく光る両眼に。


もっと早く、気付けたのに。



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