僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「俺の父親の愛人が、大雅の母親なんよ」
愛人と言う言葉を笑って口にする遊志に、あたしは何も言えなかった。
「親父は大雅をかわいがったけど、お袋は今でも認めてへん。昔はな、よく夜中に喧嘩しとったんよ」
今はふたりとも口きかへん。口の端を上げて言う遊志の瞳は悲しそうで、あたしは目を逸らずに聞いた。
「大雅の母親はな、親父の前でだけ大雅をかわいがってたんよ。……もともと子供好きじゃなくて、親父と恋愛できればえぇって人やから」
「それで? 望まれない子だったからグレたってか? 知るかよそんなん」
「ちょっと祠稀っ…!」
慌てて祠稀の足を叩くと「なんだよ」と言う目で見られた。
「……大雅はいい子であろうとしたんよ。……いい子やった、ホンマに」
遊志がポツポツ話す内容は大雅を知るに充分で、遊志と繋がれた絆を知るには充分だった。
遊志の父であり、実父でもある人に愛されて。だけど母親には愛されなくて、遊志の母親には忌み嫌われ、使用人の噂の的だった幼少時代の大雅。
両親はいつも喧嘩していて、父親は大雅の母親ばかり気にかけて。母親には大雅に負けるなと言われ続けた幼少時代の遊志。
ふたりはきっと、寂しかった。