僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



「――……凪?」


20人程度の人が寝静まった深夜3時過ぎ。ひとりパソコンで住む場所を探していると、懐かしい人と同じ名前を見つけた。


――Mukou Nagi。


画面下に小さく『募集待ってます』と書かれた横にあるめずらしい名字は、俺にとって何よりも大事な記憶の一部だった。


まさか……ありえない。

同姓同名、とか。だけど夢虹なんて名字、そうそういるはずがない。


疑いながらもう一度募集要項を見ると、条件は悪くない。むしろよかった。


家電もついているなら探す手間が省けるし、鍵付きの個室も有難い。金銭的な問題もなかった。


でも……同居……。


知らない人と住むことには抵抗があった。もっとも、誰かと住むということ自体苦手なのだが。



ふと、募集要項の下に書いてある文章の一文に目が止まった。


【集え、眠れぬヒツジたち】


「……つどえ」


どういう意味だろうとか、何が言いたいんだろうとか。そんな考えより先に、今の俺にはピッタリな言葉だと思った。

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