戦国サイダー
+++


「思李?」


「え……?」



もうそろそろ約束の時間かと思っていたところ、意外な声が聞こえてきた。



「……由惟(ユキタダ)さん?」


「久しぶり」



首を左斜め後ろに向けて、確認した姿は記憶の中の人物より少し大人っぽくなっていた。


最後の記憶と違うのは、黒から金色に変わった髪の色。


それが、持ち前のちょっと悪そうな雰囲気に拍車をかけていて、でも前よりも少し落ち着いたようにも見える。



高緑 由惟、ひとつ上の、前の恋人。



「ほら」



真夏なのに黒のごついエンジニアブーツを履いた足をこちらに動かしてきて、ペットボトルを渡してくれる。


ラベルには『四ツ谷サイダー』



私が夏になるとよく飲むものだ。


 
< 134 / 495 >

この作品をシェア

pagetop