戦国サイダー
今は平気でも、後から中毒症状を起こされたり、悪酔いされても大変だ。


取り敢えず水分をたくさん取らせないと。



溜め息をつく気にもならない気持ちを抑え、湯気に当てられて汗をかきながらティーポットにお湯を注いでいると、茶の間から「待て」という声が聞こえてきた。



……珍しく慌てたような虎の声。


何があったんでしょう、と紅茶一式をお盆に乗せて茶の間へと戻ると、その光景についに溜め息が零れた。


それも特大の。



酔いどれ兄貴が、思いっきり虎に絡んでる。


両腕を虎の首に回し、胡坐をかいていた片膝に跨って。



私が現れたことに気づいた虎が、慌てて兄を引き剥がしたものの。



その顔は。



「……キスされちゃった?」



図星。



多分『キス』という単語は知らないだろうけど、ニュアンスから感じ取ったのだろう。


頬を赤く染めた虎を初めて見た、ついでに言葉を失ってるのも。


 
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