戦国サイダー
取り敢えずこの状況から救出してあげよう。



お盆をテーブルに置き、引き剥がされてもなお、虎にくっつく兄の横へと移動する。



「はいはい、お兄ちゃん、わかったから。もう気が済んだでしょ? おとなしく寝ててよ」



ポロシャツの襟を掴み、引っ張るものの子どもみたいにイヤイヤと首を振って、呂律の回ってない口で何かを発している兄。


我ながら、こんな兄を見て嫌いにならない自分を褒めたい。


いや、こんな人がいるから酔っぱらいの相手は嫌なんですけど。



しがみつこうとする兄にどうしたら良いか戸惑う虎の姿が、なんだか憐れ。



「おにいちゃーん、この人にこれ以上くっついてたら殺されちゃうよ? ほら、静かにね、て、てっ!」



どうせ起きたら何があったかも覚えてないのだ。


日頃の恨みと言わんばかりに力一杯首根っこを引っ張った。



その瞬間、黙っていた虎がちょっと力を貸してくれたのか、本当に辟易したのか、兄を押してくれてようやくその身体が畳へ転がる。


そしてそのまま兄は、再び夢の世界へと旅立ってくれた。



もう一度特大の溜め息をつくと、ぽかんとしていた虎が我に返ったのか口元を押さえて私に背を向ける。



あー……そうか、今度はこの人のケアをしてあげなきゃならないのか。


なんとも言えない展開に、どういうべきかと頭を巡らせる。


 
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