戦国サイダー
朝が早い田舎の人たちだけれど、今日は誰にも会わなかった。


畑仕事に出かけようとする軽トラも、人も。


皆、道路にはいない。



まるで世界に私たちだけみたいに。



せめてもの、はなむけのように。



私と虎は、静かに、誰もいないアスファルトの道路を進んでゆく。



蝉の鳴き声に混じり、雀の鳴き声が聞こえる。


それが段々と遠くなり。



自分の心臓の音が聞こえ。



繋いだ手から、虎の鼓動が心に響く。



勘違いでも、いい。



今はただ、その鼓動と共に歩くだけ。





静かな一歩は。



確実に前に進み。



アスファルトはやがて土へと変わる。


 
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