Mr.キューピッド

迷惑な友人





「……出来たっ!」

報告書も書いて、今日はもう暇になった。
滝本さんは飲みに行っていて、俺はお酒は苦手で飲めないから部屋で待機……若干つまらない。
本当なら1人に1つずつ部屋が与えられるんだけれど、ここ数年でキューピッドの人口が増えてしまったとかで、新人は面倒を見てくれる先輩の部屋で一人前になるまで同居する制度になったんだって。滝本さんが言っていた。
同居と言っても滝本さんの部屋は広いんだ。1部屋が大きくて、中に何部屋もあるから同居してるとかいう感覚はあまりない。
それに……たまに泊まりに来る人もいるし。

「ナァァアナトちゃぁぁあん!」

ほら来たよ。

「ナナトちゃん!帰ってたのね!!」

バンっという音が部屋に響き渡り、そして重たい扉が開かれる。
するとそこから、長髪で髪を後ろへ束ねてポニーテールにした、自称女が現れた。

「早かったじゃないのぉー!!」

自称女は俺の懐へサササっとゴキブリのように忍び寄り、俺の腰に手を回す。

「ヒッ!!」

その動きが……いや、全てにおいて気持ち悪く、俺は奴の顔を両手でおもいっきりひっぱたいた。

「いったぁ!ナナトちゃんってば照れ屋さんなんだからっ!」
「照れてないってば!ってか気持ち悪っ!!近づくな!!」

離しても離してもくっついてくる自称女……いや、オカマ。
このヤケに俺にしつこいオカマの名前は『花園雪路』。皆からは『ユキちゃん』って呼ばれて慕われていて、俺と同い年。
俺は気持ち悪いからそんな愛称では呼ばない。普通に『雪路』とか『オカマ』って呼んでいる。
だって本当、いちいち気持ち悪いんだもん……いちいち。

「んもぅ……ナナトちゃんはノリが悪いわねぇ……」
「……」

アンタのノリに着いていけないだけだよ。
って言ってやりたいけれど我慢我慢。


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