Mr.キューピッド

「えー……つれないわね本当に……」

雪路は悲しそうな顔をして俺を見る。
オカマじゃなければ『男なのに綺麗な顔だなぁ』で終わるんだけれどね。雪路の場合オカマな挙げ句ふざけてやっている不真面目な奴だから何の感心も持てない。
黙れば美人なのに、そのふざけた性格のせいで勿体ないことをしていると思う。

「分かったわよー……ナナトちゃんが嫌なら今日は帰るわ。」

雪路はそう言って立ち上がると、扉へと歩き始める。
扉の前に立つと俺に振り返り、ゆっくりと口を開いた。
若干不気味に見えたけれど、多分それは彼がそう演じているからなんだろうね。

「ナナトちゃん、今日はこれで失礼するけど明日は容赦しないわよ?」

そして、少し含みのある笑いを浮かべて、雪路は部屋を去った。

(明日って……)

一体何を企んでるんだ雪路……。

「……まぁいっか。」

今日はもう部屋でくつろごう。
どうせまた暫くは仕事なんてないだろうし……。
俺は自分の部屋に入ると、適当に置いてある本を手に取って、ベッドへ寝転がって読み始めた。
因みに適当な本っていっても、どれも皆同じ内容なものばかり。キューピッドが読んで良い本は恋愛ものだけらしく、推理小説とか絶対に本棚には入っていないんだ。
だけど滝本さんの部屋に行くといくつかバトルものとか置いてあったりして……何でだろう?


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