Mr.キューピッド
「ただいまナナトォォウ!」
深夜過ぎ、飲みに行っていた滝本さんがお土産を片手に帰ってきた。
「滝本さん……」
俺は足元がおぼつかない滝本さんを見ながら、少しホッとしつつ呆れる。
まず滝本さんの服装。何故かズボンに大きな穴が空いている。
そして片手に持っているお土産。ケーキの箱なんだけれど、何故かかなりぺしゃんこ。
多分上から座ったんだろうなぁ……ケーキ勿体ないし。
「ナナトォ、俺を部屋までおんぶしろぉ。」
「ええっ!?無理ですよ!」
「無理じゃねぇだろぉー?俺知ってんだぞ!お前実は怪力だろ!」
「怪力じゃないです!」
『おんぶ』を連呼しながら俺の背後に寄ってきて、そしてのし掛かろうとする滝本さん。
酒の臭いで若干気持ち悪い。
「やめろおっさん!ひっぱたくぞ!!」
「ナナトの平手なんて痛くねぇよー?」
「俺一度もアンタにひっぱたいたことないし!!」
何故痛くないって知ってるんだこのおっさんは。
「じゃあ殴ってやる……」
俺は拳を作ると、背中にいるおっさんをギロリと睨む。
おっさんはそんな俺を見ると、ニヤニヤしながら『ナナトちゃんこわーい』とか、雪路みたいなことを言ってきた。
雪路より気持ち悪いな、滝本さんがそんなこと言うと……いや、雪路の場合ずっと喋ってた訳だから慣れていたのもあるかな。