Mr.キューピッド
背中に貼り付く滝本さんと闘って1時間後。やっと離れてくれたかと思ったら、今度は床へ滝本さんは寝転がり始めた。
しまいには『キヨ子ぉ、俺が悪かったぁぁあ』とか言って泣き叫ぶ始末……一体キヨ子って誰なのさ、滝本さん。
「ガァー……」
「寝てるし……」
喋ってたばかりのクセに、イビキを立てながら目を閉じる滝本さん。
口の端からは涎が出ていて、はっきり言って汚ならしい。
とりあえず俺は滝本さんを引きずって、近くのソファーへと滝本さんを乗せると、寝間着の上に着ていた上着を掛けてあげた。
「全く……疲れるおっさんだなぁ。」
しょっちゅう飲みに行ってはこれだもん……良く3年も堪えてるよなぁ、俺。
そう……3年近く一緒に生活してきたけれど、俺はあまり滝本さんのことを知らない。
知っていることと言えば滝本さんの好物くらい。梅干し入りのおにぎりとか、甘い玉子焼きとか、そんなものばかり。
(俺ももう寝よう……)
明日は書いた報告書を提出しないとだから……早く眠らないと。
俺は滝本さんを放置して自分の部屋へと向かった。