Mr.キューピッド


キューピッドや死神、監視役は皆天国付近にある『ホーム』で暮らしている。
天国に入れるのは死神が連れて来る魂のみ。俺達は入る資格が貰えていない為、付近までしか行くことが叶わない。
『ホーム』の中は見た目とは裏腹に大きくて、1つの街みたいな造りにされている。
レストランやらスーパーやら、コンビニやら病院、エステにデパートまで幅広く存在していて、俺達が住みやすい環境になっているんだ。
建物の中に建物って、最初はファンタジーとかSFの映画でも見ているかのような光景にビックリしたな。この光景に慣れてきたら、今度は人間の世界が不思議に思えてきたり……感覚が鈍る。

「確かに報告書は受け取りました。次回も頑張ってください。」
「ありがとうございます。」

キューピッドの本部へとやって来て昨日の仕事の報告書を渡すと、俺は中にあるキューピッド専用の医務室へと向かう。
滝本さんの二日酔いの薬を貰わないとならないんだけれど……何で薬局じゃなくて医務室なのかな。
……タダで貰えるからか。

「失礼しまーす……」

あまり入ったことがないからちょっと緊張する。
扉を開けてみると、消毒液の独特な臭いが鼻に入り込んできて、少しむせそうになった。
学生だった頃保健室が苦手で、どんなに具合が悪くても入ろうとはしなかった。
今でもそうだけれど。


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