ドラゴン・テイル【外伝】

 今日も、見事な晴天に恵まれた。
 風は、僅かに追い風。

『良い風だ』

 目を細めて気持ちよさそうに呟くヴァルザックに頷きながら、ウルは追い越した雲を振り返り、深呼吸をした。

 吹き抜ける空気が濡れたウルの髪や体を優しく撫でていく。

 遙か眼下に広がるのは、広大な川とその両脇にそびえる深い森だけ。

「壮大だな……」

 地平線にまで届きそうな程の森と川を見つめ、思わず口にしたウルの言葉に、同感だと言うように頷くヴァルザック。

『ウルは、海を見たことあるか?』

 何気なく聞いた言葉に、言った直後で後悔した。

 記憶無くしてる奴に何聞いてんだ、俺。

『悪い、今の質問ナシ』

 すぐ訂正の言葉を口にしたヴァルザックに、だがウルは少し考えて答えた。

「多分……無い、かな」

 濁した言葉ではあるが、今までの過去を思い出そうとする言葉とは少し違う。

『ずいぶんアバウトだが……何で無いと思うんだ?』

 問い返すヴァルザックの言葉に、再び考え込むような表情を作るウル。

「本当に、何となくそんな気がするだけなんだ。うまく言えないんだが……。
 山とか川とか、そう言うのはパッと頭に映像として浮かぶけど、海って聞いても、何も浮かばねぇ……。湖とかなら分かるんだけどな。そんなものじゃないんだろ?」

『ふぅん……なるほどな』

 何となく、ウルの言いたいことは分かる気がする。

.
< 77 / 160 >

この作品をシェア

pagetop