ドラゴン・テイル【外伝】
今日も、見事な晴天に恵まれた。
風は、僅かに追い風。
『良い風だ』
目を細めて気持ちよさそうに呟くヴァルザックに頷きながら、ウルは追い越した雲を振り返り、深呼吸をした。
吹き抜ける空気が濡れたウルの髪や体を優しく撫でていく。
遙か眼下に広がるのは、広大な川とその両脇にそびえる深い森だけ。
「壮大だな……」
地平線にまで届きそうな程の森と川を見つめ、思わず口にしたウルの言葉に、同感だと言うように頷くヴァルザック。
『ウルは、海を見たことあるか?』
何気なく聞いた言葉に、言った直後で後悔した。
記憶無くしてる奴に何聞いてんだ、俺。
『悪い、今の質問ナシ』
すぐ訂正の言葉を口にしたヴァルザックに、だがウルは少し考えて答えた。
「多分……無い、かな」
濁した言葉ではあるが、今までの過去を思い出そうとする言葉とは少し違う。
『ずいぶんアバウトだが……何で無いと思うんだ?』
問い返すヴァルザックの言葉に、再び考え込むような表情を作るウル。
「本当に、何となくそんな気がするだけなんだ。うまく言えないんだが……。
山とか川とか、そう言うのはパッと頭に映像として浮かぶけど、海って聞いても、何も浮かばねぇ……。湖とかなら分かるんだけどな。そんなものじゃないんだろ?」
『ふぅん……なるほどな』
何となく、ウルの言いたいことは分かる気がする。
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