つらら飴
1章  ナミダ雲
 涙で舞った水蒸気。  
 窓を覆った水蒸水。
 一晩泣いた甲斐がある。
 曇る窓。
 景色はまだら。
 私の心。
 涙の版画。
 水彩画。
 紅い眼擦る冬の朝。
 萎れた睫毛。
 重ねて絡む。
 涙腺緩む。
 また湿る。
 頬に出来た涙道。
 舗装もされずに陽が当たる。
 髪の毛くっ付く頬の道。
 唇の中に滞る。

 服のまま寝た金曜日。
 枕が重い想い出涙。
 皺の服を脱がなくちゃ。
 ぬるい空気が肺を刺す。
 循環酸素、窓開ける。
 乱れた髪に牡丹雪。
 根雪の予感と呟く冬風。
 既に私の睫毛に積もる。
 息吐く白く溜め息長く。
 根雪のあなた。
 私の心はあなたで埋まる。
 除雪融雪今は無理。
 余り期待はしないけど。
 春に望み掛けるだけ。
 忘れられないあなた想い。
 冷える心に雪が張る。
 すぐには消えない残り雪。
 流れて忘れる春はどこ。
 きっと当分霙雨。

 
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