コピー
僕は地上をもう一度眺める。
何かが足りないような気がする。
人が歩いている姿が全く見えないからか?
いや、違う。
それとは別の…。
「この世界には植物はないのですか?」
何処を探しても緑が見当たらない。
「植物?
そんなものここには必要ないさ。
酸素くらい自分たちで作れる。
まあ、人間や動物の食料に必要だから特定の場所でまとめて栽培されているんだがな。
動物たちも同じで我々の食料にするために、まとめて飼育されている。」
とんでもない世界のようだ。
人間に制圧された世界。
人間の思うがままだ。
ついには僕のような新たな生命を人工的に作り出してしまった。
その技術はまだ一般的ではないにしろ。
ん?
では、
「どうして『近藤拓郎』は僕を作り出すことが出来たんです?
まだ一部しか知らない技術じゃなかったんですか?」
「それも良く分かっていないことなんだが、情報が漏洩したのではないか、と我々の中では考えられている。
頭の良いあいつのことだ。少しの情報でも、与えてやればこの技術の仕組みについて理解してしまうだろう。
まあ、君が生まれたということは完璧には理解できていなかったということなんだろうがな。
ちなみに『コピー』で作られたのは君が最初だ。
動物実験はなされていたが、人間の場合は倫理的な問題で揉めていたからな。
とはいっても、『コピー』は感情を持たないという考えが主流になって来たから、我々でも、もう時期『コピー』を作り出す予定になっていたんだが…」
その前に『近藤拓郎』が僕を作ったということか。
「こんな話をここでしていては、誰かに聞かれた時まずい。
また今度だな。
とりあえず、本物の『近藤拓郎』に成り済まして、私の講義でも受けてみるか?
今はお昼。
もうすぐ講義が始まる。」
いくらなんでも、いきなりそれは…。
大丈夫なのか?
「そんな不安にならなくてもいいさ。
午後からは私の講義しかないのだし。
指名はいつもしていないから、心配しなくていい。」
先生は、本を一冊僕に手渡した。
「『近藤拓郎』がよく読んでいた本だ。
講義と講義の間の休憩時間、何もしていないのも不自然だし、それでも読んでおくといい。」