オモチャのキモチ【短】
相変わらず不機嫌そうな声で彼は言い捨てる。


「この程度でネを上げるようじゃ、俺の遊び道具にもならねえもんな。」


髪に引かれて、頭の痛みは生理的な涙が浮かびそうな程だったけれど、彼の機嫌が一層悪くなったりしないように、私は必死につま先立って彼に近付いた。


「んだよ。
俺に尻尾振ってすりよってくんだ?
エサが欲しいってか?
誰が主人かは忘れちゃいないようだな?」


言葉だけは楽しそうなのに、彼の声の温度がまた下がってしまう。


私はまた自分が失敗した事に気付いた。


「ご、ごめんなさ………あっ!」


新たなる怒りに油を注いでしまうまえに謝罪しようと試みた私の言葉は、またしても与えられた痛みによって中断させられた。
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