続きは、社長室で。


彼女に封じられて、無音となったスイートルーム。



先ほどのドアの音が木霊して、眼前の世界は無色と化しているのに。


佳奈子さんの表情と言葉だけは、鮮明に憶えているなんて。


本当に不都合で、皮肉なモノだね…――




何の情景も映さないままでいたいのに・・・


色褪せた世界の方が、どれほど楽になれるかな。


投げやりにも出来ず、まさに茫然自失で無気力な私。



涙は流れない、言葉なんて発せない、何も考えられない。



拓海の気持ちは、彼女だけのモノ――



「っ・・・」


駆け巡るモノたちが結びつくのは、あまりにも惨い事実。


すべてをヴェールに包んでいた、酷すぎるモノだった。





“俺の気持ちはオマエにしかない”


やっぱりウソで、その場限りだったのね?



“あれがギリギリのボーダーラインだ”


本命がいれば、妾への嘘吐きすらムリよね?



“言わない事ほど、相手を陥れる物はない”


本当だね…、その辛楚さで打ちひしがれそうだもの。




こんなにも苦しいなんて、知らなかったよ・・・




< 207 / 266 >

この作品をシェア

pagetop