花火
彼が左手で器用に赤い小さな金魚を二匹すくったところで網が破れた。
「よしっ。二匹!おっちゃん、それ別々の袋に入れてね!」
私はそれを見届けると立ち上がり、元来た方へ歩き出した。
「ちょっと待って!」
振り向くとさっきの人が私に金魚の袋を突き出して立っている。
「これ、いらない?」
なんて無邪気に笑う人だろう。私より歳上だろうか。
「…いる。ありがとう」
私が金魚を受けとると彼は私の隣を歩き始めた。