僕が生まれた意味
 
 きっと僕らはもうすぐ消える。これは変えようのない事実。
 でも僕は、もう生まれてこない方がよかったなんて少しも思っていなかった。
 僕らは生まれてすぐに消えてしまう儚い存在だけれど、こんなに短い時間でこんなに幸せな気持ちを知ることができた。
 しかもひょっとしたら、僕らが生まれたことで、あの男の子と女の子に僕らが感じたような幸せを与えることができたのかもしれない。
 それは、とてもすごいことだと思った。
 明日、僕らに会いに来た彼らは地面に残るマフラーと髪止めを見て泣くかもしれない。
 だけど、泣く必要なんてない。そう伝えたい。
 彼らは僕らに、ただ生まれて消えてしまうことしかできない僕らに、生まれた意味を与えてくれたのだから。

「生まれてこれてよかった」

 マフラーの暖かさを感じながら、僕は願った。
 幼い彼らの心に、公園で作った雪だるまと雪うさぎの存在が生き続けてくれることを。






fin
< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

未完成コンプレックス
-RYO-/著

総文字数/1,107

青春・友情5ページ

表紙を見る
僕は透明人間
-RYO-/著

総文字数/1,665

絵本・童話15ページ

表紙を見る
賢い世界の壊し方
-RYO-/著

総文字数/2,762

その他7ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop