涙恋~RUIRENの魔法~
準備・・・・・・・・・
走りついた学校のグランドに
優はいなかった。
私は不安にかられて
あたりをさまよった。

  どこ?



その時声がして
私は思わず身をかくす。


「愛斗、気持ちの切り替え大事だぞ。
いつまでもひきづると
そこから歩き出せない。
プレイも大事だけれど
メンタルも重要だぞ。」





「うらやましいぞ。
おまえは若くて健康で
いつでもボールがあればサッカーができる。
今自分の体力が衰えて
ボールを蹴ることもできないよ、俺。」


「でも充実してる顔してます。」


「そう見えるなら嬉しいけど・・・・・
奥底には恐怖感が渦巻いてる。」


「恐怖感?
だってコーチは幸せでしょう?
亜恋とつきあってるんでしょ?」



「亜恋は俺と出会ってから
泣いてばかりで・・・・・
もうすぐもっと泣かしてしまうかと思うと
恐怖で仕方がないんだ。
泣き崩れる亜恋を
救うことができないから・・・・・
人生って充実してる時は
長くつづかないかもしれない。」



「幸せにしてやればいい。
泣かす必要はないし・・・・・
あんなにまっすぐコーチを見てるのに
俺はうらやましい・・・・・
コーチがうらやましくて
憎たらしくなる。」

愛斗は優をまっすぐ見た。


「いいな。お前のその目・・・・・
まっすぐで汚れてない。
健康で逞しい体に精神・・・・・・
俺にはないものばっかりで
うらやましくて憎らしくなる・・・・・」


優の細い体がピーンと張った。



「愛斗・・・・・・・・・・・
俺には時間がないんだ。
これから向かうところに亜恋を連れてはいけない。
どんなに泣き叫んでも
置いてくるしかない。
抱きしめることも
声をかけることも
見守ることもできなくなるから・・・・・」



私は、涙があふれてる。



「人生大事にしろ。
おまえはまっすぐ前を見て
自分を高めていけ。
おまえのような素質と可能性を持ってるやつが
一度くらいのミスで
負けるな。
これからもっともっといろんなことが
あるから、メンタルも鍛えて
この挫折をプラスにしろ。」



愛斗の肩を叩いた。
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