涙恋~RUIRENの魔法~
「そんな都合のいいことしないで。」


自転車を静かに停めた。

私は荷台から降りた。


「私みたいなのは
そんなことしてもらう価値なんてないよ。
私は・・・・・
不倫して・・・・・


ユウくんと別れた後・・・・・
・・・・・ユウくんの赤ちゃんを
誰にも知られずにおろしたの・・・・・
ユウくんも知らない・・・・・


だから、サイテーな人間でしょう?
そして、愛斗に出会って
何も知らない顔で
胸をときめかせて
またユウくんに会って心が乱れて・・・・・
自分がこの世界で一番嫌い・・・・・
だから、愛斗はもっともっと
素敵な子がいるはず。
私のことなんて気持ち切り替えて
忘れて。」


愛斗の背中に語りかけた。


「今日は、ありがとう。」

私は歩き出した。


自転車がバッタンと音を立てて倒れた。


驚いて
振り向いた私を
愛斗が強く抱きしめた。


「俺、今まで恋なんて興味なくて
なんにもわからないけど・・・・・
ただ、好きな女を簡単に諦められない。
初めてなんだ
サッカーより大事だって
夢中になるもの・・・・・・
俺は、泣かせないから。
好きになってって言わない。
俺があきらめるまで
亜恋に恋させてて。」




「愛斗・・・・」


愛斗の全身から
伝わる真っ直ぐな恋の魔法が
私を白く染めなおす・・・・・・


「ありがとう・・・・・」


私も愛斗の背中を抱きしめた。
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