【完】約束=願い事
1分
2分
5分
10分……
遅いよ。
「ねぇ。寒いんだけど」
5月末。
夏には少し遠く、春を過ぎかける頃。
夜風はまだ、
ひんやりと肌に届く。
時間は23時を過ぎようとしていた。
「すぐには決まらないよ」
口を尖らせて子どもっぽく怒って、
そう言った次には、
「でも寒いね。
大丈夫、夢瞳?」
寒くて縮まるわたしに、
大人の仕草で着ていたジャケットをかけてくれた。
本当に掴めない、
不思議な少年だ。
「じゃあ、さ」
決まったのだろうか。
「うん…」
「決まるまで、またここで。
9時過ぎに裏門前」
待ち合わせね。
と言って、そのまま帰ろうとする。
え。
ちょっと。
「待ちなさい!」
今度はわたしが照の手を掴む番だった。
「それじゃわたしが二つも聞き入れることになるじゃない!」
「…そぅだね。
でも夢瞳の悪行を防いであげるんだから一石二鳥だ」
「あんたね。
そんなことで納得すると思うわけ?」
「え。しないの?
もぅじゃあ仕方ないな」
照は悲しそうに目を伏せた。
そして再び目を開ける。
「夢瞳のしてほしいことも何かひとつしてあげるから良いだろ?」
彼は言った。
意味不明なことを。