【完】約束=願い事
夜7時
まだ薄明かるい夜
「さぁ終幕へのスタートだ」
照の声に真田さんは大きく頷く。
小太りに扮した彼は
その見た目を裏切る素早さで、すんなり木を登って行く。
ちょうど2階の高さまで到達すると碧の部屋の窓へと伝った。
静まり返る闇夜。
妨げる音もなく、真田さんは彼女の部屋に侵入する。
わたしと照は
それを見届けるとすぐ、碧の部屋へ走り出した。
『逃げても無駄だよ』
『ちっ近寄らないで?!』
『さぁ…もぅ君は僕のものだ…』
中で行われる一幕は
そんな陳腐なものなのだろうか。
一気に階段をかけ上り、肩で息をしながらそんな妄想を描く。
3流演出の台本でも
真田さんならうまく役を演じきりそうだ。
時間にすると数十秒
ドアの前で静かに待つ。
もうあと数瞬で
彼女の悲鳴が。
悲鳴が……
あれ?