キヨツカ駅改札口にて

11の改札口






ここキヨツカ駅改札前には、すぐ向かいに小さなコンビニがあります。
朝昼夜と、沢山の従業員の方が入れ代わり立ち代わり。
中にはきっと、学生バイトの方もいらっしゃるのでしょう。
目が合えば、お疲れ様ですと挨拶してくださるお姉さんやお兄さんは、皆さん、とてもお若くいらっしゃいますから。


「寒いなあ……」


気付けばすっかり季節は冬。
紅葉の頃を過ぎ、すぐ目の前の通りは、すっかり枯れ葉が舞っていました。
橋桁から覗く空も、暖かい時期とは違う澄んだ青です。
吐き出す息も白く、行き交うお客様も厚着が目立つようになりました。


「お疲れ様です」
「あ、お疲れ様です。これからですか?」
「はい、寒くなりましたね」


改札を抜けてきたのは、いつもお昼からコンビニに入っているお兄さんでした。
お兄さんはふいにバッグを漁って、はい、とわたしに何かを渡しました。
受け取ってから、じんわりと伝わった熱に視線を落とし、え、と小さく声を上げてしまいました。


「あ、あの、」
「サワダさん、いつも頑張ってるから。どうぞ」


まだ買ったばかりと思われる暖かいペットボトル。
向かいとはいえ、気を付けて見ていなければ、きっと、見えないだろうわたしの小さなネームプレート。


「……ありがとうございます」
「お互い頑張りましょうね」


はい、と交わした笑顔。
じゃあ、と返された笑顔。

すっかり枯れ葉舞う季節となりました。
けれど、キヨツカ駅は今日も、ささやかにじんわりと、暖かさがこもっています。





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