星の降る線路の上で
「大昔の事を考えていた…ちょうどお前くらいの時だ」
「どんな子供だったの?」
記憶と辿るような仕草で考えた後、皮肉を込めた笑みを浮かべ言った。
「リュック一つで家出する勇気は無かったし、ジュースはちゃんとお金を出して買っていた。お前と違って」
「…で?」
さも面白くない冗談を聞かされたみたいに璃子が声のトーンを落とす。
少女の表情を満足そうに眺めていた三崎は、不意に遠くへ視線を向けると、ぽつりと呟いた。
「でも、信じていた…お前と同じように」
「え?」
想像もしなかった三崎の言葉に、璃子は耳を疑うように顔を上げる。
そんな少女の視線に気づくふうもなく、三崎は独り言のように先を続けた。
「自分を待っている輝かしい未来を。数え切れないくらいの夢を…大人になったら何にでもなれるって信じていた…」
「シンジは…何になりたかったの?」
再び自分を置き去りにしそうな三崎を現実に引き戻そうと、璃子が問いかける。 
三崎は耳の届いた少女の声に一瞬躊躇しながらも、遠い昔に封印してしまった『忘れもの』の正体を言葉にした。 
「小説家…SFのね」
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