戦国遊戯
「はやぶさ、後ちょっとだから。頑張ってもらえるかな?」

話しかけるとはやぶさは、首を上下にふった。玲子はにこっと笑って、火に砂をかけて消し、才蔵に、行こう、と促した。

道中は驚くほどスムーズに進行できた。田中君の思惑通りにことが運んでいるのかも知れないが、それならそれで、政宗に会うまでは、その思惑に乗っかってやろうじゃないかと、先を急いだ。

夜も更け、深夜近くではなかというくらいに、玲子は1件の大きな屋敷のそばに着いた。

「玲子殿、ここが政宗の館です」

馬から下りて、門に近寄ろうとすると、才蔵が慌てて止めに入ってきた。

「ちょ、危険です!おやめください!」

見ず知らずの人間が、いきなり大将の屋敷に、乗り込もうとするのだ。捕まえられて、下手をすれば殺されたって文句を言えない。

「でも、政宗さんに会わないと!」

才蔵にそう言って、玲子は悩んだ末、門番らしき男のところに駆け寄っていった。

「玲子殿!」

才蔵が慌てて後を追う。

「夜分遅くに申し訳ございません。政宗様にお目通りを願いたいのですが」

門番の男に土下座をする。いきなりのことで、門番の男は面くらい、びっくりしている。

「だ、誰だ貴様!」

当然の反応が返ってくると、玲子は羽織っていた羽織を、門番に渡す。

「先日、この羽織を頂いた者です。火急の用件があるのです。政宗様に、至急、お目通りを!」

そう言って、また深く頭を下げた。
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