世界の灰色の部分
お気に入りの赤いドレス、耳に輝く金色のピアス、爪にはドレスの色よりさらに赤いマニキュア。
午後10時の出勤に向けて、店のバックルームの鏡の前にいると、店長がわたしを呼んだ。
「瑞穂、15分早いけど出てもらっていい?お前指名の客来たから」
「えっ?うん、いいけど」
少し驚いて、携帯電話の受信メールボックスを開いてみた。
今日来るなんていってた客いたっけ?
まぁ、いっか。
バックルームを出て、ボーイの後ろについて歩いていく。
「お待たせいたしました、ご指名ありがとうございます。瑞穂さんです」
普段ならここで、「ありがとー」なんてテンションあげて客のとなりにすぐに座るわたしだけど、今回はすぐにそうはできなかった。
ボーイが言いながら手を指した先には、担任、川上先生がひとりで座っていた。
あたしは絶句した。
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